オペレーターではなく、表現者として。~「Local write#06」(その2)

Pocket

**********************
2017年11月末に「Local write#06」を千葉県いすみ市で開催しました。
ぼく自身、気づきや感じたことの量がこれまで以上に大きかったので、忘れないように何回かに分けて記しておこうと思います。
**********************
(その1「学びの言葉」)

「Local write」は、インタビューや執筆について(参加者が)学ぶワークショップですが、(ぼくが講師となって)教える講座ではありません。「Local write」という場から自分自身で学ぶという意味ではぼくもまったく同じ立場であり、本当にたくさんのことを参加者から学ばせてもらっています。

参加者からその場で頂く質問にもすべてしっかり答えていきますが、気をつけていることは「うっかりそれらしいことを教えてしまわないように」、ということです。

少しかっこよくなりすぎてしまいますが、ぼくは参加者に対して「オペレーターではなく、表現者であってほしい」と思っています。
オペレーターとは、ノウハウに従って機械的にデータを処理して並び替え、使い勝手よく整理整頓する人のこと。あるべき完成形というものに近づけることが良しとされ、それを行う本人は無色透明になります。
一方で表現とは、それをせずにはいられない個人的な衝動の発露であり、表現者は表現物と同化し、表現物は多様でカラフルなものになっていきます。

たとえば、コーヒーを淹れる人にとっては、豆の選択、煎り加減、淹れる時間など(もちろんその他にもたくさん)に表現の余地があるのだと思いますが、文章を書くということにおいては読み書きとパソコンのキーボード操作ができれば、そこから先、なにをどのように書くのかがすべて表現の範疇です。

経験のある人が、表現するためのさまざまな選択肢を見せることは大切ですが、個人的な衝動や感性に紐づく「表現」とは、人が人に教えられるものではありません。

前述の参加者の言葉を借りるまでもなく、「書いたものには自分自身が表れる」ものですから、いち読者として人が書いた文章を読んだとき、その愛すべき‟癖や、いびつさ”は、いやおうなく伝わってきます。しかし、それらは、自分自身でうまくコーディネートすることさえできれば、誰にも真似のできない、かけがえのない長所になります。その人だけの‟経験”もそのひとつです。

そうした可能性を持つ人に枝葉末節のテクニックや教え、角度を変えてみると美しく見えるはずの枝葉を収まりの良い形に画一に切り詰めていくことは、社会的な損失でさえあると思います。また、テクニックやフレームに縛られてしまうと、状況や対象が変わった時の対応もできなくなってしまいます。
(先日、『「小商い」で自由にくらす』のデザインや「Local write#06」の撮影をしてくれたD-NOTSのデザイナー荒川さんと話したとき、デッサンについて「アルミ缶と金属の缶の描き分け方も、ノウハウよりも対象をよく観察することが大切で、答えはすでに目の前にある」とも言っていて、デッサンも、インタビューも執筆も、あるいは農業だって、まずは目の前の状況を観察して適切な対処をしていく事が大切という意味で同じなのだな、と思いました。そのために判断力や適応力を伸ばすこそが必要。)

「Local write」で行うのは、オペレーターではなく、表現者であるために、自分自身の癖やいびつさまで含む骨格を正しく知り、その骨格に合った筋肉をつけるためのワークです。そのために、他者を知るというプロセスを踏んでいきます。

文章を書くことをオペレーションにしてしまうのは、もったいない。
なにより、表現はオペレーションよりもずっと楽しいものだから。

(つづく)

→(その3「知識を頭で自覚することよりも、学びを体で消化すること」)

◆開催パートナー・地域の募集◆
『ローカルライト』は、3泊4日で行うインタビューとライティングの地方滞在型ワークショップです。参加者はインタビューとライティングについて学び、まちに触れ、人を知り、仲間を作り、最終的に原稿を仕上げていきます。これまでに、関東、関西、北陸、九州(2018/1月時点)で開催してきました。
まちにとっては取材対象とまちそのものを公報し、開催地と縁のある人を増やすという側面があり、参加者にとっては地域での暮らしや仕事を知り、書き手としてのスキルを育むという側面があります。
たとえば、「外部の目線で地域を発信したい」「webマガジンで公報したい」「地域の刊行物を作りたい」「地域の食に光を当てたい」というニーズがあり、開催に興味をお持ちの方は、ぜひこちらからお問い合わせください。※主催される地域の方の参加ももちろんOKです。

contact

◆最新情報はローカルライトのfacebookページでも発信しています◆
https://www.facebook.com/localwriting/

次回の開催等をこちらのfacebookページでも告知しますので、どうぞご確認ください。

こちらもおすすめ: