「小商いとかして自由に暮らして、もっと人生遊ぼうって勧めたい」中島デコさんインタビュー(後編) | 小商いで自由にくらす | 磯木淳寛 | イカロス出版

Pocket

多くの人が、ものづくりを行い、店を持たず、ネット販売も行わず、小商いでの収入を中心に据えて暮らす。数年前から注目されているローカル「房総いすみ地域」で、なぜ小商いで暮らすことが可能なのか?小商いが地方を豊かにするのはなぜか?話題書『小商いで自由にくらす』(イカロス出版)の内容を期間限定で特別掲載します。
※掲載期間3/18~4/2

自由なマインドを持ち、マーケットで生計を立てる人たちが多く暮らす房総いすみ地域。彼らの存在は、どのような風土から生まれるのか。
いすみ市内で宿泊施設とカフェ「ブラウンズフィールド」を営む料理家の中島デコさんは、家族やスタッフ、WWOOFer*(ウーファー)たちと共に暮らし、自らの日常の中にたくさんの人を受け入れてきた。この場所を経由して、やがて近隣に住むようになった移住者もいる。「ブラウンズフィールド」は、房総いすみ地域に〝好きなことを中心に据えて自由に生きる〟マインドを育む土壌を作った重要な拠点のひとつだ。
(photo by 髙橋哲平)
前編はこちら

いろいろと変化しながら、自分のやりたい方向を模索した

──ウーファーを受け入れ、カフェと宿泊施設もある。このブラウンズフィールドを何らかの形で訪れた人は、かなりの数に上りますね。 

もう私もわけわかんないくらい(笑)。若いスタッフやウーファーたちが、ここでカップルになって近所に住むようになったりと、昔とは違う流れがどんどん出てきたし、将来は明るいなって思う。今年、いったんこれまでのことをまとめようと思って書籍も出版したしね(『ブラウンズフィールドの丸いテーブル』BFBOOKS刊)。私も彼らにあらためてインタビューしたりして、とっても面白かった。

──それにしても、基本的にスタッフもウーファーもデコさん・エバさんの家に一緒に住んでいるでしょう。やっぱりあらためて客観的に見ると変わった暮らしです。
 
そもそもエバさんという変わり者が好きな時点で私も変わってる(笑)。でも最初にエバさんが、まだ日本になかったWWOOFというシステムを海外のネット情報で見つけてきて、「こんなのがあるんだけれど、やってみない?」って言ってきたときには突っぱねたの。当時はもちろん家族だけで住んでいたし、「変な人が来たり、子どもに悪影響があったりしたらどうするの。絶対にイヤ」ってね。でも、最初に来た子がすごくいい子だったの。それに第三者がいることで、夫婦仲がもっと良くなる感じもあって。
そうして私もエバさんも、いろいろと変化しながら、自分のやりたい方向を模索したんだよね。今では一緒に働いてくれるスタッフたちを私の子どもみたいに感じてきてる。

──数年でスタッフが入れ替わるから、新しいスタッフとは、どんどん年齢差が開いていくし。
 
そう。それでいてみんなすごく頼りになるし、一緒にいて楽しいし、私を年寄り扱いしないで一緒に遊んでくれる。これってすごくありがたい。普通は、小学生は小学生、中学生は中学生、年老いたらどこかの施設へって分けちゃうけれど、ここではみんな一緒くた。私には、生まれる時から死ぬまでを地域でカバーできて、みんなが助け合って平和に楽しく過ごせたら…という理想があって、ブラウンズフィールドをそういう場所にしていきたいなってイメージがあるんだよね。
すでにそういう場所になっている?ありがとう、がんばります(笑)。玄米菜食っていう食事のことだけでなく、そういうこと全部をひっくるめたものがマクロビオティックな生活だと私は思っているから。


(photo by 磯木淳寛)

遊ぶように、自由に暮らそう

──東日本大震災後は千葉県も放射能の危険があると言われました。「マクロビオティックは豊かな自然環境に根ざした暮らしを目指すもの。なぜよそに移住しないの」と、よく聞かれたんじゃないですか?
 
たしかによく聞かれた。このあたりの人もたくさん西日本へ移住していったし。実際、3月11日の夜に「今から一緒に逃げようよ」ってお誘いも受けたしね。でも、ちょうどそのときに「明日、世界が滅亡しようとも、今日、りんごの木を植えよう」というルターの言葉に出合ったの。植えるということは、次の未来に託すということ。それはやっぱり土とか場所とか、大地につながって〝グラウンディングする〟というイメージ。慌ててどこかへ飛び立つのではなく、何があってもグラウンディングしていれば生きていけるんじゃないかと思ったの。それでもし、この地域が完全にNGということになったら、それはそれで「受け給たもう」と。
私にとっては、ここが一番グラウンディングできる場所。それに、もっと大変な思いをしている人たちを、受け入れられる場所にもできるんじゃないかと。

──マクロビオティックの身土不二ですね。大地から離れるのではなく、大地とつながって受け入れる。

だって、自然ってすごいんだよ。線量を測ると当初は数値がある程度あったけれど、次の年からはほとんどゼロ。一度大地が汚れても果実はなって、なった果実に悪いものは入っていない。自然の循環サイクルがちゃんと機能していて、自然が「大丈夫」って言ってくれている気がした。もちろん、食べものを選んだり調理したりという工夫は、自分なりにするけれどね。

自分では好きなことをして遊んでいるだけ

─そういうデコさんの哲学はどこから?親や家庭環境からの影響ですか?
 
お父さんは電気屋さん、お母さんは主婦で、両親は普通の人だね。私は長女で下に妹が3人の4人姉妹。家庭はいたって平凡かな。ただ、私が二十歳を過ぎた頃にお父さんが直腸ガンになって他界。彼が病気になった頃から食べものや生活全部を見直すようになって、マクロビオティックを本格的に始めた。マクロビオティックは最終的に食からの世界平和だし、楽しく遊び倒して一生を終えようっていうものだから。
あんまり知られてないかもしれないけど、マクロビオティックの提唱者の桜沢如一先生は「マクロビオティックをやると人生を遊び倒せる」って言っていて、そこが私には一番ヒットした(笑)。今では私もあちこちイベントとか教室とかで飛びまわってるから、まわりからは忙しく働いてるように見られがちなんだけれど、自分では好きなことをして遊んでいるだけなんだよね。

──マクロビオティックって、楽しい教えだったんですね。
 
そうだよ。桜沢先生はすごく昔の人だけれど、やっぱり世界各国をまわってマクロビオティックを広めつつ、遊んでいたわけ。それを知って「いいなあ」と思ったの。玄米さえ食べていれば健康になって医療にかかる必要もないし、健康に自信もつくから、将来を憂いて保険をかける必要もない。全然お金をかけずに遊び倒せる。「すげえ、これ!」ってね。
だって普通にお勤めしていたら、こうして平日の午後に日陰で田んぼ眺めがらおしゃべりなんてできないでしょ? 好きな時に好きな人と好きな場所で仕事するのって、自分にとっては遊びだもん。だからみんなにも、小商いとかして自由に暮らして、もっと人生遊ぼうぜ!って勧めたいよね。

中島デコインタビュー『小商いで自由にくらす』(磯木淳寛著/イカロス出版)より。

いすみ市在住で、全国の地方を数多く見てきた著者が、当事者へのインタビューを通じて様々な視点から考察する。
今、地方はのんびり暮らすところではなく、夢が叶う場所になった。
仕事がネックとなって地方移住に二の足を踏んでいた人にも勇気が湧いてくる一冊!
「小商い論・田舎論」として、いすみ市在住の中島デコ(マクロビオティック料理家)、
鈴木菜央(greenz.jp)、ソーヤー海(TUP)の三氏と青野利光氏(Spectator)にインタビュー。
巻末では佐久間裕美子氏(「ヒップな生活革命」)と、アメリカのスモールビジネスとの対比について論を交わす。※Amazon.jp「社会と文化」「経済学」の2部門で1位獲得!

定価:1512円(税込)
ISBNコード:978-4-8022-0300-5
サイズ:A5判
ページ数:186

 

▼内容をもっと詳しく知りたい方は↓

 

 

こちらもおすすめ: